409.にゃほん昔話・王女と侍女の物語

 昔々その昔。巣床村の猫浦ちゅう所に、王女とその侍女が住んでおってな。毎日仲良く寄り添っておったそうな。

 王女はこの侍女を大変可愛がっていてな、仔猫の頃は毎晩一緒に寝ていたのじゃった。

 ところが侍女が成長すると⋯。

アタチは侍女なんかじゃないわっ!
侍女でなければ何だというのじゃ

「ネルダス侯 そちが育てた娘が、わらわに従わなくなってしまったぞ」「私は愛情込めてよく躾けたつもりですが、反抗期なのかも知れません」

「アタチは侍女じゃないのっ」「侍女じゃ」「侍女じゃないってば!」「わらわが侍女だと言ったら侍女じゃ!」王女が王位に着く頃には、二人の仲はすっかり悪くなってしまってな⋯。

 困り果てた女王は、家臣達になんとかするよう命じてみた。「拙者は性格を直すような呪術は会得しておらんのでござる」「僕にもムリですぅ。彼女凶暴なんだもん」

「ドンなら言うことを聞かせられるのではないか?」「オラ子猫は相手にしねぇだよ〜」

 結局役に立たない家臣達は、全員女王に叱られたのじゃった。

「切れ者のネルダス侯にも策がないとは」「わしゃワン・アンだがやー」

 そんな訳で女王がどうしたかというと⋯。

 すっかり諦めたのじゃな。

 そして二匹は今でも、巣床村で幸せに暮らしているそうな。
 めでたしめでた⋯「アタチ侍女じゃないからっ」「侍女なのじゃ」 「おねーちゃんミルクで顎の下ガビガビになってるわよっ」「お前こそ目ヤニがついておるわ」

2023-01-28

348.にゃほん昔話・巣床村のドン親分

 昔々その昔。巣床村の猫浦ちゅう所に、鈍五郎と名乗る若者がやって来てな。いつかこの国の王になろうと、大志を抱いて暮らしておった。

 けんど若者の前には、悪賢く意地の悪い強敵が立ちはだかってな。

 二匹は毎日数えきれないほどの争いを繰り広げただよ。

 そんでも鈍五郎は、戦いに勝ち続けて、ついに悪者を屈服させただなぁ。

 巣床村に平和が訪れたように見えただよ。

 ところがある日、巣床院お伝と名乗る別の敵が現れてな。王座を奪うと宣言したのじゃ。

 彼女をひと目見た鈍五郎親分は⋯。

「子分になることにしたんだよー」

「だって お伝かわゆいんだもん♡」

 こうして手下を手に入れたお伝は、女王としてこの国を治めるようになってな。

 二匹は今でも、巣床村で幸せに暮らしているそうな。
 めでたしめでたし。

2021-12-03

321.にゃほん昔話・巣床村のゴンガン爺

 昔々その昔。巣床村の猫浦ちゅう所に、子育て上手な二匹の爺さんが住んでおってな。

 次々に里子を預かっては、面倒をみておった。

 ガン爺さんは賢くて、ゴン爺さんは悪賢く⋯。

 たとえばメシの時に、ガン爺さんは自分の皿を譲って仔猫に先に食わせてやり、ゴン爺さんは仔猫から横取りして自分が先に食っておった。

 ガン爺さんは仔猫をよくしつけて、色々なことを教えてやり⋯。

 ゴン爺さんは仔猫をよく焚き付けて、色々な悪事を教えてやり⋯。

 ゴン爺さんにそそのかされて、ゴミ漁りが見つかり大目玉を食らった者や、進入禁止の蚊帳の中に誘い込まれて絡まっておった者など、皆が悪い事をすればひどい目にあうと、身をもって学ばされていたのじゃった。

 ガン爺さんは、仔猫達が大きくなっても、相変わらず可愛がってやり⋯。

 ゴン爺さんは、仔猫達が大きくなったら、別の意味で可愛がってやっていた。

 そして二匹は今でも、巣床村で幸せに暮らしているそうな。
 めでたしめでたし。

2021-06-05