
昔々その昔。巣床村の猫浦ちゅう所に、王女とその侍女が住んでおってな。毎日仲良く寄り添っておったそうな。

王女はこの侍女を大変可愛がっていてな、仔猫の頃は毎晩一緒に寝ていたのじゃった。
ところが侍女が成長すると⋯。



「ネルダス侯 そちが育てた娘が、わらわに従わなくなってしまったぞ」「私は愛情込めてよく躾けたつもりですが、反抗期なのかも知れません」


「アタチは侍女じゃないのっ」「侍女じゃ」「侍女じゃないってば!」「わらわが侍女だと言ったら侍女じゃ!」王女が王位に着く頃には、二人の仲はすっかり悪くなってしまってな⋯。

困り果てた女王は、家臣達になんとかするよう命じてみた。「拙者は性格を直すような呪術は会得しておらんのでござる」「僕にもムリですぅ。彼女凶暴なんだもん」

「ドンなら言うことを聞かせられるのではないか?」「オラ子猫は相手にしねぇだよ〜」

結局役に立たない家臣達は、全員女王に叱られたのじゃった。

「切れ者のネルダス侯にも策がないとは」「わしゃワン・アンだがやー」

そんな訳で女王がどうしたかというと⋯。
すっかり諦めたのじゃな。

そして二匹は今でも、巣床村で幸せに暮らしているそうな。
めでたしめでた⋯「アタチ侍女じゃないからっ」「侍女なのじゃ」 「おねーちゃんミルクで顎の下ガビガビになってるわよっ」「お前こそ目ヤニがついておるわ」
2023-01-28