
おデン様が旅立たれてから、猫達はみんな一緒に何かをすることがなくなりました。にゃごにゃご言いながら揃って朝の挨拶に来てくれたり、ずらっと並んで仲良く食事したり、全部おデン様の命令のもとに行われていたようです。
従わなければならない強いおデン様も、かばってあげなきゃいけない小さなボンにゃんも居なくなり、オス達はそれぞれやりたい放題に暮らし始めました。

ドンごろーはまだしょんぼり中。この前オヤツをもらっている時に、コバンに背中を噛まれ、びっくりして皿を譲ってしまいました。これは猫同士では、ボスの権限を手放したと解釈されても仕方ない反応です。今まで自分が他猫に噛み付いて、皿を譲らせてきた鈍五郎親分が、怒って反撃しないとは、さすがに衰えを隠せません。

一方噛み付いた張本人の蛮八は、相変わらずのどかに“オツムがお花畑”しております。猫社会の掟をまったく知らないので、行いの意味を理解していないのです。

「うぅぅ⋯蛮八の野郎!」「生意気ずら」「ゆるさねぇずらよ」「オラが皿を譲っちまうなんてあっちゃならねぇだ」「ぜったい懲らしめたるだよ」

「なにっ?鈍五郎が皿を譲っただと!?」地獄耳忍者煙の弾九郎。後ろの親分の独り言を聞き逃しません。

「なにっ?鈍五郎が皿を譲った!!」目ざといマムシの権三も、異変に気づきました。

「ついに戦国時代到来っすね!」「僕はこの時を待ってましたよっ!」

「下剋上だーーーっ!!」「ぎゃははははははは!」

「ばーか!最後に笑うのはこのオレ様さっ」「いひひひひひひひ!」「おめぇなんぞ10年はえぇんだよ!」

「どいつもこいつもアホこくんでねぇずら!」「オラが簡単に負けると思うけ?」「返り討ちにしてやるかんな!!」「ぐははははははは!」

仏の頑四郎だけは、争いに興味なさそうです。「勝手にやってくださーい」
そして図らずも次期親分候補No.1に躍り出た蛮八は⋯。

「ぐへへへへへへっ」「これからはオヤツを真っ先にもらえるのでござるな!」
ゴキゲンですが、体が大きいだけでヘタレです。大丈夫でしょうか。
2025-06-15

































