昔々その昔。巣床村の猫浦ちゅう所に、黒と灰色のこぐま兄弟がおってな。毎日相撲を取り合って技を磨いていたそうな。
黒熊の蛮八は他の熊達に「耳がとんがった変なヤツ」と除け者にされてここに来たのじゃが、巣床の猫達にも避けられておった。「拙者はクマではござらん」
ひとりぼっちの蛮八の為に、耳が折れた灰色熊 弾九郎も貰われて来たのじゃ。「僕もクマじゃないですぅ」
変わり者の二人はすぐに意気投合すると、いっしょに大きくなっていき⋯。「僕達クマじゃないし〜」「変わり者でもござらんよ」
力を持て余すこぐま達は、鈍五郎親方に入門して、毎日指導を受けてな。
疲れた時は、頑四郎に面倒を見てもらうようになったのじゃ。
上達すると、巣床院お伝様の前で立ち合いを披露し⋯。
力量が認められて、警備の仕事が与えられたそうな。
厳しい白玉小ぼん姐さんに怒られることも多かったのじゃが⋯。「後ろもしっかり警戒なさいっ!」「前も後ろも見張るのでござるか」「後ろは僕に任せて下さいっ」
こぐま達はそれからも、毎日欠かさず稽古を続けたので、親方ももう何も言わなくなったでな。
やがてマムシの権三に襲われても負けないほどに成長し⋯。
ついには権三と対等に戦うまでに強くなったのじゃった。
そして二匹は今でも、巣床村で幸せに暮らしているそうな。「でも僕達 今でも下っ端のままですよね」「夜回り組から少しも出世しないでござるな」
2023-06-24